教会には毎日多くの郵便物が届く。その中にたまに見知らぬ方から証し集のような冊子が届くことがある。先週は「生きる力、赦す力」と題する大学生斎藤諒さん(25歳)から小冊子の証し集をいただいた。
斎藤兄は高校二年の時、自転車で登校中に乗用車にはねられた。以来、首から下が動かせず、人工呼吸器を必要とする生活に。障害による苦しみのみならず、加害者への憎しみや、「死にたい」という感情が芽生え、絶望感に押しつぶされる闇の中に置かれた。
しかし、クリスチャンの野球部の先輩から勧められた聖書を読み、ある牧師との出会いを通して、「相手を赦すことで苦しみから解放される」ことを知り、心境が変わった。今では、加害者家族と和解し、ともに聖書を学ぶ仲となった、という。
証しが書かれた小冊子の文章は、その時々の気持ちを率直かつリアルに書かれていて、読む者の胸を打つ。
訪問した牧師の言葉が彼の心に響いた。「加害者を赦すことは、生身の人間にできる事ではありません。ましてや、諒君にそれを求めるなんて酷な話です。でも、人を憎んだまま生きるのも苦しいですよね。たとえ、相手が死んだとしても、憎しみは消えません。聖書は悪霊の存在をはっきりと教えています。罪を憎んで人を憎まずという言葉がありますが、まさにその通りで、憎むべき相手がいるとするならば、それは人ではありません。悪霊によって起きた事故なのだから、悪霊を憎んで、加害者を赦すのです」。牧師の話は、今まで聞いてきた宗教や神々の話とは全く違う感覚で、僕はなぜか自然と涙があふれた、と彼は回想している。その時から、彼の生活に変化が起こったと、証しされている。
斎藤兄は「これからは、いろんな機会を通して聖書に救われたことや言葉の力を多くの人に伝えたい」と話されている。