毎週木曜夜7時30分からのNHKテレビ「ファミリーヒストリー」を楽しみにしている。著名人のルーツを探る番組である。その人の祖先の歴史に様々な人生ドラマがあり、興味は尽きない。
先月は大竹しのぶさんが登場した。大竹さんといえばこんな逸話がある。私が以前住んでいたマンションに『キューポラのある街』の監督浦山桐郎さんもおられた。私が入居する前の話だが、浦山監督が当時撮影していた『青春の門 筑豊編』に出演していた大竹さん(当時17歳)を深夜奥さんに連絡もなしに連れて帰宅した。狭いマンションのこと。奥さんは怒って大げんかしたとのこと。マンション住民の語り草になっていた。
その大竹しのぶさんはなんとクリスチャン家庭の子どもだった。彼女が毎週金曜の朝日新聞の夕刊に連載しているエッセー「まあいいか」にも彼女の家には仏壇も神棚のなく、94歳のお母さんのタンスの上に十字架と亡き祖父母と父親の写真があるだけと書いている(2月3日付)。お母さんの名は「江すてる」。そう、旧約聖書の「エステル記」に登場するエステルからとったもの。
祖父母は幸徳秋水や内村鑑三とも親交があったという。祖父は吉川一水といい、無教会派の宗教家。戦前のこと、憲兵にも監視され、苦しい生活だったという。祖母八重もまたすごい人物。
戦後、祖父吉川一水の聖書研究会に熱心に出席していた大竹章雄がしのぶさんの父親。このお父さん、実は江すてるさんと一緒になる前にすでに結婚して妻子がいたのである。お父さんは晩年この子どもたちとの再会を願っていたがかなわず、後日娘たちが謝ったそうである。ずっと心の奥に刺さったとげのようなものでさぞ苦しかったことだろう。
2月10日の「まあいいか」に「ファミリーヒストリーに出演し、祖父母のたちの生き方が、今の私に繋がっていることをひしひしと感じた」と書いている大竹しのぶさん、聖フランチェスコの教え「清貧で自然を愛し神の前で平等」に感動するのだっだ。