文芸評論家の亀井勝一郎(1907-1966)は「人生は邂逅である」といった。「邂逅(かいこう)」とは、偶然の出会い、すなわち「めぐりあい」のこと。今アニメ映画『君の名は。』が大ヒットしているが、戦後まもなく大ヒットした『君の名は』は真知子と春樹のめぐりあいとすれ違いのメロドラマだった。
人生は出会い。そう、人生は出会いの連続である。そして決断(選択)の連続であり、別れの連続でもある。そのようにしてその人の人生の道筋が描かれる。私たちがこれまでに遭遇した偶然の出会いがチェーンのように繋がって、私たちが今ここにいるのだということを知る。
また、出会いは力だ、とも言える。ちょうど、それ一つでは何の役にも立たないジグソーパズルの一ピースが、もう一つのピースと出会って意味を持ってくるように、人と人は出会うことでお互いに意味あるものになっていく。愛し合うことも、助け合うことも、夢をもって共に働くことも、すべて出会いによって生まれる。出会いには、限りない可能性と力が秘められている。
ある友人は小学校のクラスメートに十数年ぶりにバスの中で出会い、その後結婚した。私は高校で現代国語のO先生と出会って、文学の魅力に取りつかれた。そんな出会いの不思議さに気付くほど、出会いをおろそかにできなくなる。ある牧師は出会いを求めてどんな場所にも会合にもできるだけ顔を出すようにしているという。
そのようにして、人は無数の出会いによって自分をつくってきた。両親はむろんのこと、学校の先生、近所のおばさん、友人、勤務先の上司などなど。どの出会いも今日の自分を準備するかけがいのない出会いであった。そして私の決定的な出会いは神との不思議な出会いだった。この出会いによって人生の生きる意味を教えられ、精神は解放され、喜びと感謝に満たされた。その後、忍耐やゆるすこと、謙虚さ、奉仕の精神、積極的な生き方を教えられて、今日の私がある。ただ感謝。