赤とんぼ見ての雑感

 先々週の昼下がり、教会の中庭に赤とんぼが5,6匹飛び回っていた。それを見て、「ああ、もう夏も盛りを過ぎたな」と思った。旧盆(8月15日)の頃であった。そういえば、子どもの頃、大人たちが「旧盆が過ぎると朝晩風が涼しくなる」とよく言っていた。

  このように私たち日本人は、自然現象の変化によって、季節の移り変わりを敏感に感じ取っている。次の歌などはまさにそれを詠んでいる。「秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(藤原敏行・平安時代)。意味は、「秋の気配は、目にははっきり見えないけれど、さわやかな風のたてる音でそれと気づかされた」。

  セミの鳴き声にも季節を感じ取れる。「ミーンミンミンミン」と聞くと、「もう夏休みも終わりだな」という思いにさせられた。外国人はセミや秋の虫の鳴き声はただの騒音としか感じ取れないという。車の騒音と違って、風流な音なのにもったいないことだ。

  ところで、最近の気象情報は「今日の最高気温は何度です」といって、数字で表す。確かに35度とか36度とか言われると「えー、暑そう」とは思うけれど、なんだか味気なく、実感が伴わない感じがする。それにしても、子どもの頃に夏休み帳に毎日、天気と気温を書き込んだ記憶によると、30度を超す日は珍しかった気がするが、最近は毎日30度を超えて普通である。日本はもう亜熱帯気候だという人もいる。これも異常気象か。

  気温も重要だけど、日本の夏は湿度が高いので不快指数が上がる。関東では暑くても日陰に入ると風が心地よい。ところが、私の故郷の瀬戸内海は風もなく日陰でも高湿度でムッとする。扇風機もあまり効果がなかった。冷房機(クーラー)が普及してやっと逃げ込む場所ができた。大人たちはデパート、喫茶店、パチンコ屋、映画館などで涼をとったものだ。

  四季の移り変わりを自然現象から感じ取ろう。暑さしのぎになるかもしれない。